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S.T,N.E.

Music for S. T, N. E.
by haruka nakamura
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映画『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』を何度も観た。繰り返し観るほど、ほんの一瞬のシーンでも胸が熱くなる。まだ誰にも知られていない青年がギターを手に歌い出す。観客は“フォークソング”という枠組みでその音楽を聴くが、そのすべて歌詞の一語一句、メロディーが途轍もなく異質。それでもその言葉は、鋭く真実を突いている。
やがて彼は有名になる。すると皆が求めるのは“過去の”曲。しかし、今を生きる彼が歌いたいのは、その先にある曲だ。

1988 年、初めてロサンゼルスでボブ・ディランのコンサートに行った。正直、期待外れだった。
1994 年、東大寺での公演も観た。ジョニ・ミッチェル、ジョン・ボン・ジョヴィ、ライ・クーダー、そして日本からは玉置浩二や布袋寅泰、X JAPAN まで参加する豪華な顔ぶれ。しかし、目当てはボブ・ディラン。結果はまたもや期待外れ。その後も何度か観たが、“こちらが期待する”ボブ・ディランからはどんどん離れていく。当時の自分は、あの映画の中でブーイングする観客に近かった。

歳を重ねてようやくわかった。自分が求めていたのは、あの頃のアルバムの曲だったのだと。進化を止めないボブ・ディランは、その瞬間にやりたいことをやっている。頑なにひとつのスタイルを貫くかっこよさもある。初めて聴いても誰の曲かわかる安心感。それも魅力だ。

では、自分はどうか?
TRUCK を1997 年に始めて、もうすぐ30年。その間も作りたいものを追いかけ続け、ブレたことはない。むしろディテールを加え続けてきた。それが楽しかったし、今も好きだ。
ただ、10 年ほど前から初期のシンプルさに戻りたい気持ちもあった。これは気まぐれではない。
新しい音楽や、少し違う服との出会い、ロサンゼルスで感じた開放感。そんな日々の好奇心の積み重ねがもたらした自然な変化だ。気持ちが移ったのではなく、幅が広がったのだ。今でもカバーオールは好きだし、時にはリネンのジャケットを羽織るのも心地よい。
ロサンゼルスで借りていたロフトや、よく通ったカフェにあった“抜け感”が、自分には必要だと感じるようになった。そんな空気を持つ家を新たに建て、家具も生まれた。当初は“おとなTRUCK”と呼んでいた。

この話を聞いたLA の親友、Stephen Kennがくれた言葉がある。
何年も乗り続けてきたTruckをレストアするとき、味わいのある外観はそのままにして、新しいエンジンを積む。そのエンジンとは、デザインに対する新しい興味やインスピレーション、パッション。でもそれは同じ old beautiful Truck。気持ちよく走る。
このスティーブンの言葉から名付けた“Same TRUCK, New Engine”

大阪のTRUCK の1 階、かつての作業場を大改造してS.T,N.E. ショールームを作ったのが2024 年12 月。そして今年11 月、南青山で「 Same TRUCK, New Engine Exhibition Tokyo 」を開催する。大阪からショールームのすべてを持ち込み、今の自分を見てもらいたい。
正直、かなりドキドキしている。ボブ・ディランのように大ブーイングをものともしないほど強くはない。
でも、やります。一歩前へ。

Same TRUCK, New Engine A New Journey; 47 Furniture Stories, 16 Reflections. Now Available for Pre-order Same TRUCK, New Engine A New Journey; 47 Furniture Stories, 16 Reflections. Now Available for Pre-order

ABOUT

1997年に 〈TRUCK〉を始めてから思いつくままに作りたい家具を作ってきた。
その中で感じ始めたこと、それは初期の頃のようにすっきりと飾り気のない家具を作りたいということ。

“STRIPPED DOWN, SIMPLE, CLEAN, PURE” 削ぎ落とし、シンプルに。 さらに上質に。

“Less but better” インダストリアルデザイナー、ディーター・ラムスの言葉に深く共感し、それを目指したい。

そんな気持ちで新しい家具をデザインし試作を繰り返すなか、発売から20年以上経ったテーブルや椅子を、仕上げ方やファブリックを少し置き換えるだけですごく新鮮に見えることに気付く。そしてそれらが新しい気持ちの家具とすっと馴染むことが 嬉しい。 これまでの経験をもってビギナーのような好奇心で今一度、家具に向かい合いたい。

この話を聞いたLAの親友、スティーブン・ケンがくれた言葉。 何年も乗り続けてきたTruckをレストアするにあたり、味が出てきた見た目はそのままにして新しいエンジンを積む。
新しいエンジンとはデザインに対しての新たな興味、インスピレーション、パッション。でもそれは同じold beautiful Truck。気持ちよく走る。

このスティーブンの言葉から名付けた “Same TRUCK, New Engine”。 家具を作り始めた頃のPUREな気持ちで向かい合った〈S.T.N.E.〉をスタートします。

黄瀬徳彦

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