TRUCK の家具づくりの根本にあるのは、 自分が本当に使いたいものをつくること。

自分自身がいちばんのユーザーであり、その声を最も近くで聞き続ける存在でもある。使いながら気付くこと、時間が経って見えてくること。そのすべてに正直に向き合い、もっと良くできると思えば、潔くすぐに仕様を変える。

大量生産を前提とした一般的な家具メーカーでは難しい、この小さな循環
――“作る・使う・気付く・また作り直す”――
この小さな循環を続けられること。
それこそが TRUCK の大きな違いであり、ものづくりの力になっている。

特に身体で直に感じるチェアやソファは、言葉や写真だけでは伝わらない。
だからこそ、実際に座って、気持ちよさを確かめてもらいたい。

気持ちよく長く使えるものを届けたい。
その思いこそが、TRUCK の変わらない軸です。

街の小さな自転車屋の親父さんが作業時に使うスツールや、パンク修理に必要なものだけ を収めた道具箱。そんな“使う人自身が必要に応じて作った“道具” に強く惹かれる。そし て、長年使い込まれ、味わいが増した姿はとてもカッコいい。

自分の“ものづくりの道” も、そうやって少しずつ形づくられてきた。

高校生時代、将来について考え続けていたころ、当時読んでいた“アウトドア雑誌” に「長 野県松本技術専門校」での家具製作の記事を見つけた。“爽やか信州で家具作り”。なんか 良さそうだ。すぐに見学へ行き、進路は決まった。

松本での一年間を終え、やっぱり大阪が恋しくなり帰阪。実家から自転車で10分の木工所 に就職し、椅子やテーブルを作りながら3年半を過ごす。そして23歳で独立。技術も未 熟で、材木を買うお金もなかったが、“自分の工場で作りたいものを作れる” ことがただ嬉 しかった。

大阪にある S.T,N.E. ショールームへお越しください。ここは、かつて私たちの工場でし た。

ナラ材は高価で手が出せず、当時まだ安かったメープルで椅子を作り、それを担いで梅田 ロフトに飛び込み営業。すると2週間、展示スペースをもらえることに。急いでその椅子 から派生させたシリーズを作り、工場前で撮影、隣の印刷所でパンフレットを作ってもら った。挑戦は予想外に好評で、2週間の予定だった売り場は5年間続き、少しずつ仕事ら しくなっていった。

1997年、唐津裕美と〈TRUCK〉を立ち上げ、工場に併設したショップをオープン。 それ以降、もう30年近く“自分が欲しいと思うものを作る” ことを続けてきた。

家具は敷地内の工場で受注後製作。
オリジナルの木部カラーは、職人が重ね塗りで奥行きを表現

ノートに何度もアイデアを描き、寸法や構造を考えながら試作する。椅子やソファは一旦 家で使い、工場では気づけなかった違和感を体で感じる。改良を重ねてようやく商品にな る。

作りたいものに正直に向き合い、積み重ねてきたディテールや要素。それは楽しくもあっ たが、10年ほど前から心のどこかで「初期の単純さ」に戻りたいと思い始めた。もちろん 当時と同じものを作っても、今では同じ良さにはならない。でもその頃の潔さに、これま での経験を注ぎ込んでみたい。

出来るだけ要素を足さず、静かに佇むもの。ふわりと心地いい無地のニットのように、毎 日袖を通したくなる家具。そんな思いから始めたS.T,N.E.。

TRUCKというバンドの中で、ソロアルバムを出すような感覚。例えるなら、サザンオー ルスターズの桑田さんがKUWATA BANDのアルバムを出したように、バンドとは別の表 現の場を持つような感覚。

TRUCKもS.T,N.E.も根っこは同じ。毎日の暮らしの中で“道具” として長く寄り添い、 気づけばあの自転車屋さんのスツールや道具箱のように、年を重ねてよりカッコよく、手 に馴染んでいくものであって欲しい。

これまでの歩みの延長線上にあるのが、自分にとっての S.T,N.E. だと思っている。

オリジナルの木部カラーは、職人が重ね塗りで奥行きを表現