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Dogs and People

犬と人間  文:黄瀬徳彦

   小学校の卒業文集に書いた文のタイトルは「犬と人間」。みんなが林間学校や運動会の楽しかった思い出を書いているなかで、一際異彩を放っていた。 
12歳の少年は、そこで何を言いたかったのか?当時やっていた通信学習の国語で「犬にごはんをあげる」と書いた。すると添削されて返ってきた答案には、赤ペンでバツがつけられ、「犬にエサをやる」と直されていた。それがどうも理解も納得もいかず、そのことをなぜか卒業文集に残していた。 今思うと、“答え”を絶対のものとして、何も考えずに受け入れることができなかったんだと思う。それは、ある意味すごく大事なこと。常に「本当にそうかな?」と考えてみること。 これまで家具を作り、何軒も建物を建て、本を出版したりする中で、その都度それぞれの“プロ”がいて、彼らの常識を突きつけられる。僕は、そんな経験者たちの話をリスペクトを持って聴くのが大好きだ。真剣に耳を傾けて聴く。 でも、“プロ”が「それは無理です」と言ったときに、「そうですか、残念」で終わらせていたらそれまで。「無理です」と言われることは本当によくある。何十回、何百回とそんな場面があった。でも僕は、いつも“アイデア”でそれを乗り越えて生きてきた。「諦めたらあかん」を合言葉にして。 まずは先方の言っていることをしっかり理解する。そこから「ひょっとして、こうしてこうしたらどう?」と瞬間的にいくつもアイデアを出す。すると、「それならいけるかも」と、少し光がさす。そしたらこっちのもので、一緒に作戦を立ててやってみる。そう、やってみるのが大事。 いつもゲーム感覚のようで、その壁を工夫して乗り越えられたときには、大きな満足感がある。実際、その後に生まれる違いはかなり大きいし、何よりすごく楽しい。 小学生のころ、何がそんな自分を育んだのかははっきりとはわからないけれど、あの頃から今につながるものが確かにあったんだなと、遠くに思いを馳せる。結構おもろい奴やったなぁ。 

In the Yard with My Father

父との作業 
文:黄瀬徳彦
   「初めて作った家具は?」ある本の取材でそう質問された。えっ、何かな?と記憶を遡る。思い浮かんだのは、子供のときに庭で父と一緒に作ったスリッパ立て。小さな板に木の棒を何本か立てたようなもの。父の作業を横で見ていた。ノコギリや金槌を使う父。その微かな記憶には、「器用には見えない」という印象が引っ付いている。そう、父は決して“器用な人”ではなかった。でも、よく家の中の作業を一緒にしていた。毎朝の畳の部屋の箒がけ(箒の持ち方、立てるときには穂が斜めにならないように逆さに、左右均等に満遍なく使う、四角い部屋を丸く掃除したらダメ)、窓ガラスの雑巾がけ(父の雑巾の洗い方が記憶に刻まれている)、庭の樹の剪定(剪定といえるのかどうか?素人のチョッキンチョッキン)、そのときに出た枝葉を穴を掘って埋める作業(肥料になると信じていた父)、屋根のペンキ塗り(夏の鉄板屋根が熱かったことを覚えている)など。子供ながら、よく手伝っていた。いつも楽しく、というよりは、どこか“やらされている感”があったと思う。今振り返ってみると、あんな父との作業のひとつひとつが、今の自分をかたちづくる大きなひとつの基礎になっているのかな、と。静かな感謝とともに、懐かしく思える。

Still Life

スティルライフ 文:黄瀬徳彦   S.T,N.E.という名前がつくずっと前から、家具を作り始めた頃のように、シンプルなものを作りたいという気持ちが、自分の中にあることに気づいていた。 でも、なかなかそこへ向かえていなかった。 そんな中、ロサンゼルスでロフトを借り、近所のコーヒーショップに通うようになった。広く言えば、ロサンゼルスという街全体に漂う“抜け感”が心地よかった。自分にはこの“抜け感”が、とても必要なんだと思うようになった。 ある日、ネットで見つけた土地に惹かれ、そこに建つ建物のイメージが浮かびはじめた。 毎日のように現地へ通い、草に覆われたその場所で、ときには日の出の時間に立ち、朝日を浴びながら思いを巡らせた。 この場所にふさわしい建物とは何かを考え続ける。 家のプランを描きはじめると、自然とそこに置かれる家具の姿まで思い描いてしまう。 そんな日々の背景には、いつも haruka nakamura の『スティルライフ』が流れていた。 このアルバムは、家や家具のことを考える時間に寄り添ってくれる。 同時に、頭の中に風を通し、集中へと導いてくれる。 “ただのBGM”ではない。 静かに、でも確かに、前に進むのを助けてくれる。 そんな、ありがたい存在だ。 今これを書いているときも、『スティルライフ』が流れている。 haruka君自身がこのアルバム制作の過程を綴った日誌を読んだ。その中の言葉も、音楽と同じように、ひとつひとつがそこに在るべくして存在している。そこにたどり着くまでの時間と距離を、必要なものとして、丁寧に受け止めている。その姿勢に深く感銘を受けた。 自分はどうだろう。まだまだ足りていないのではないか。 そんなふうに、気持ちを引き締めてくれる。

On Creating

モノを創る 文:黄瀬徳彦 今まで何度か思ったことがある。これだけ世の中にたくさんの椅子があるのに新しく作る必要があるのか?そんなことを考え出すと気分は塞ぐ方向に向かう。真心ブラザーズが歌ってくれる。「モノを創ることをやめられるわけがない」勇気づけられる。ありがたい。

Reflections on S.T,N.E. #1 Mitsuharu Yamamura (BOOKLUCK)

山村光春 編集者/コピーライター企業広告、雑誌や書籍、ウェブなどメディアの編集、執筆を手がけるBOOKLUCK主宰。編集教室「やさしい編集室」を運営、リフレクソロジストとしても活動。現在は東京と福岡を行ったり来たり、でも魂は大阪人。Instagram @bookluckandgo 1997年 雑誌『オリーブ』の取材が出会いのきっかけ。2006年出版の『MAKING TRUCK』を企画段階から共に作り、執筆を担当。TRUCKスタートから30年の歩みを知る貴重な存在。

Still Life with S.T,N.E. #1 Naohiro Akiya ( yacipoci )

秋谷直弘 yacipoci ( と wapiti と poru ) オーナー酒と音楽と趣味にまみれた男。週末は夫婦して愛車のローバーミニで「サンソン」を聴きながらドライブに夢中。もちろん夜は酒場にまっしぐら。 大阪・北浜の「yacipoci」は、昭和初期の復刻ビアサーバー「スイングカラン」で丁寧に注がれる生ビールと、レコードから流れる音楽を楽しめる大好きなお店。音と一杯が、自然と時間の流れをゆるやかにしてくれます。