Still Life

Still Life

スティルライフ

文:黄瀬徳彦

 

S.T,N.E.という名前がつくずっと前から、家具を作り始めた頃のように、シンプルなものを作りたいという気持ちが、自分の中にあることに気づいていた。 でも、なかなかそこへ向かえていなかった。

そんな中、ロサンゼルスでロフトを借り、近所のコーヒーショップに通うようになった。広く言えば、ロサンゼルスという街全体に漂う“抜け感”が心地よかった。自分にはこの“抜け感”が、とても必要なんだと思うようになった。

ある日、ネットで見つけた土地に惹かれ、そこに建つ建物のイメージが浮かびはじめた。 毎日のように現地へ通い、草に覆われたその場所で、ときには日の出の時間に立ち、朝日を浴びながら思いを巡らせた。 この場所にふさわしい建物とは何かを考え続ける。 家のプランを描きはじめると、自然とそこに置かれる家具の姿まで思い描いてしまう。 そんな日々の背景には、いつも haruka nakamura の『スティルライフ』が流れていた。

このアルバムは、家や家具のことを考える時間に寄り添ってくれる。 同時に、頭の中に風を通し、集中へと導いてくれる。 “ただのBGM”ではない。 静かに、でも確かに、前に進むのを助けてくれる。 そんな、ありがたい存在だ。

今これを書いているときも、『スティルライフ』が流れている。

haruka君自身がこのアルバム制作の過程を綴った日誌を読んだ。その中の言葉も、音楽と同じように、ひとつひとつがそこに在るべくして存在している。そこにたどり着くまでの時間と距離を、必要なものとして、丁寧に受け止めている。その姿勢に深く感銘を受けた。

自分はどうだろう。まだまだ足りていないのではないか。 そんなふうに、気持ちを引き締めてくれる。

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