In the Yard with My Father
父との作業
文:黄瀬徳彦
「初めて作った家具は?」
ある本の取材でそう質問された。
えっ、何かな?と記憶を遡る。思い浮かんだのは、子供のときに庭で父と一緒に作ったスリッパ立て。小さな板に木の棒を何本か立てたようなもの。
父の作業を横で見ていた。ノコギリや金槌を使う父。
その微かな記憶には、「器用には見えない」という印象が引っ付いている。
そう、父は決して“器用な人”ではなかった。
でも、よく家の中の作業を一緒にしていた。
毎朝の畳の部屋の箒がけ(箒の持ち方、立てるときには穂が斜めにならないように逆さに、左右均等に満遍なく使う、四角い部屋を丸く掃除したらダメ)、
窓ガラスの雑巾がけ(父の雑巾の洗い方が記憶に刻まれている)、
庭の樹の剪定(剪定といえるのかどうか?素人のチョッキンチョッキン)、
そのときに出た枝葉を穴を掘って埋める作業(肥料になると信じていた父)、
屋根のペンキ塗り(夏の鉄板屋根が熱かったことを覚えている)など。
子供ながら、よく手伝っていた。
いつも楽しく、というよりは、どこか“やらされている感”があったと思う。
今振り返ってみると、あんな父との作業のひとつひとつが、今の自分をかたちづくる大きなひとつの基礎になっているのかな、と。
静かな感謝とともに、懐かしく思える。